ブログ小説『ハンティング・パーティ』

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zoom RSS 【小説】 第47話 CIAの男、チェット

<<   作成日時 : 2008/04/12 01:20   >>

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3人とも興奮は簡単にはおさまらず、どろどろに疲弊しているはずなのに、まんじりともできない一夜だった。

それでも夜は明けた。

朝日の輝きは、生き延びた男たちに生きていることを教えてくれた。

ベンはまぶしげにその光を見た。
生きていることは凄いことだと思った。
エリート街道まっしぐらに放送局の副社長になりあがった彼の父親には、おそらく今の自分の気持ちはわからないだろうと。

ダックは身に迫る死の恐怖の中で、ベンと自分をかばったサイモンの勇気と友情を見直していた。
長年の辛苦も喜びも共にしてきたことを誇らしく思った。

サイモンはすんでのところでフォックスを取り逃がしたことを、まだ悔やんでいた。

二人を危ない目に遭わせてしまったという悔悟もあった。
自分の無力さも、また思い知った。
あのフォックスの薄笑いは一層リアルに胸に残った。
これから一生、またあの男が出てくる夢を見るのだろうか。… 

明け方になると、3人はNATO軍のヘリコプターに乗せられ、ボスニア・ヘルツェゴビナ空港の軍港へ移送されることになった。
おそらくそこから、軍用機で極秘にアメリカへと強制送還されるようだった。

まるで犯罪者のようにヘリコプターの中に放り込まれ、3人はそれぞれくさい毛布にくるまっていた。

そこへCIAの役人がやって来て「チェット」と名乗った。

3人を見ると、満足げにうなずいた。

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サイモンがその顔をちらりと見て言い放った。

「これはニュースだ。取材したい」

チェットはサイモンの前にかがみこむと、じっと顔を見た。

サイモンは畳み掛けた。

「降ろしてくれ。『報道の自由』っていう言葉を知ってるだろう」

チェットはあっさりと言った。

「ボスニアには、ない」。



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※映画『ハンティング・パーティ』は、5月10日(土)よりシャンテシネ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショーです。



※ブログ小説目次
第1話 サイモンとダック
第2話 ぶち切れたサイモン・ハント
第3話 ボスニア・ヘルツェゴビナへようこそ
第4話 ベン、ホリデー・インのバーにデビューする
第5話 落ちぶれた相棒
第6話 3人は揃った
第7話 「聞こう。ネタって?」
第8話 ムスリムのカフェで
第9話 盗み聞き
第10話 “生と共に死を授かった男”
第11話 出発
第12話 チェレビチの森で
第13話 セルビアの村はずれのカフェ
第14話 撃たれた3人の車
第15話 フォチャへ
第16話 警察のティータイム
第17話 チェレビチからの命令
第18話 国連の男・ボリスとの出会い
第19話 プロの出番
第20話 フォックスは守られていた
第21話 バーの外の暗闇で
第22話 危険へと続く道
第23話 マルダとウーナ
第24話 サイモンの恋
第25話 サイモンの恋A
第26話 最悪の別れ
第27話 チェレビチの見張り人
第28話 バーを探す
第29話 招かれざる客
第30話 命がけの問い
第31話 オレンジの車を追え
第32話 「ひざまずけ!」
第33話 クロアチアの小人
第34話 また現れた男
第35話 約束
第36話 天国から地獄へ
第37話 嘘
第38話 夜9時。ビシェグラード
第39話 マルヤナという女
第40話 CIAのルール
第41話 追っ手の影
第42話 誰も信用するな
第43話 荒らされていた部屋
第44話 サージャンの小屋
第45話 フォックス、あらわる
第46話 危機一髪の銃弾

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