ブログ小説『ハンティング・パーティ』

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zoom RSS 【小説】 第44話 サージャンの小屋

<<   作成日時 : 2008/04/09 07:23   >>

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ホテルで捕らえられた3人は目隠しをされ、口にはガムテープを張られて、トラックの荷台に載せられたようだった。

その間も、それぞれの頭のそばに銃口があった。

どのくらいの時間、荷台で揺られていたのか定かではない。
けれどサイモンは「そんなに遠くない場所」だとぼんやり思った。
うねうねと車が蛇行して登っていったところを感じると、やはりチェレビチの山奥ではないかと。

フォックスはそこにいる。
しかしその男の目の前で、3人は拷問されるのか、すぐに殺されるのか。
… サイモンは針の目をくぐり抜けるようにこの危機から脱する方法はないかと神経を集中させていた。

トラックが止まった。

目隠しされたままの3人は荷台から飛び降りるよう言われ、怯えていたベンは突き飛ばされて落ちた。

空気の澄んだ場所のようだ。
雨上がりの空気は全身にひたひたと冷たく、息をすると鼻の奥がしんと冷えた。

銃口に突かれながら3人は土の上を歩き、芝の生えた土手を転がるように降りていった。

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やがて小屋のような建物に入らされた。
草いきれがする。
馬小屋か、とサイモンは暗闇の中で思った。

3人はそれぞれ両腕に天井から下がった手かせをされた。
万歳をさせられたような格好だ。

サイモンから目隠しがはずされた。

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ぼんやりと視界が戻ってくる。ランプの灯りに浮かび上がったのは、額にキリル文字のあるあの男だった。
フォックスの護衛をしているといわれているサイコな男。
サージャンだ。

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たいていのことには驚かないサイモンが、ガタガタと震えだした。
その男の目が、狂気に満ちていたからだ。
それはまさに「死」を好物にする男の目だった。

半裸のサージャンは、置いてあった斧を静かに持ち上げた。

「これが俺の愛用の斧だ。よく見ろ」

幾人もの人間の首をはねてきたであろう斧は、ピカピカに研がれていた。
おそらくこんな痩せた男が振り下ろしても、ひとおもいにはねられそうだった。
返り血を浴びてもすぐ洗えるように、この男は半裸でいるのだろう。

今度はベンの目隠しが取られた。

とたんにベンはぶるぶると震え、涙と汗を同時に流し始めた。

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ベンの目の前に「生と共に死を授かった男」というキリル語が額に刻まれた男がいた。
口を割らせやすそうに見えたのか、ベンだけが口のガムテープもはずされた。

ベンは震える唇でなんとかしゃべった。

「悪いが分からない。言葉がわからない」

サージャンはセルビア語で話し続ける。

「リーダーはどいつだ」
「頼む。何を言ってるか分からない。ダック、ダック、助けてくれ」

助けを求められても、まだ口にガムテープが張られているダックはもがもがと何か言いながら体をよじるばかりだ。

「言葉が分からない」

斧を手にしたサージャンはベンの体の回りを舐めるように1周した。
背中に回ると、

「CIAが来ていたのはとっくにわかっていたんだ」

と言った。CIAという単語が聞き取れたベンは必死に反論した。

「CIAじゃない。俺たちはジャーナリストだ」

ベンが体を揺するたび、汗と涙が飛び散った。

「リーダーを教えろ。そいつを殺す。でないと皆殺しだ」 

その言葉の意味をサイモンとダックは理解した。

が、ベンには分からない。

「助けてくれ。分からない。何を言ってるんだ」
「さあ。早く言え。リーダーは誰だ」

その時、ガムテープの下から、サイモンが叫んだ。

「俺だ。ボスだ。俺が、ボスだ。ボスだっ」

ダックもベンも、サイモンを見た。

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「ボスだ。俺が、ボスだ」

サイモンは涙ながらに繰り返した。

ダックとベンの目にも涙が浮かんだ。 
 
サージャンは、斧を持ち替えて、サイモンのそばににじり寄った。


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※映画『ハンティング・パーティ』は、5月10日(土)よりシャンテシネ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショーです。



※ブログ小説目次
第1話 サイモンとダック
第2話 ぶち切れたサイモン・ハント
第3話 ボスニア・ヘルツェゴビナへようこそ
第4話 ベン、ホリデー・インのバーにデビューする
第5話 落ちぶれた相棒
第6話 3人は揃った
第7話 「聞こう。ネタって?」
第8話 ムスリムのカフェで
第9話 盗み聞き
第10話 “生と共に死を授かった男”
第11話 出発
第12話 チェレビチの森で
第13話 セルビアの村はずれのカフェ
第14話 撃たれた3人の車
第15話 フォチャへ
第16話 警察のティータイム
第17話 チェレビチからの命令
第18話 国連の男・ボリスとの出会い
第19話 プロの出番
第20話 フォックスは守られていた
第21話 バーの外の暗闇で
第22話 危険へと続く道
第23話 マルダとウーナ
第24話 サイモンの恋
第25話 サイモンの恋A
第26話 最悪の別れ
第27話 チェレビチの見張り人
第28話 バーを探す
第29話 招かれざる客
第30話 命がけの問い
第31話 オレンジの車を追え
第32話 「ひざまずけ!」
第33話 クロアチアの小人
第34話 また現れた男
第35話 約束
第36話 天国から地獄へ
第37話 嘘
第38話 夜9時。ビシェグラード
第39話 マルヤナという女
第40話 CIAのルール
第41話 追っ手の影
第42話 誰も信用するな
第43話 荒らされていた部屋

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5月10日(土)公開のリチャード・ギア主演映画『ハンティング・パーティ』をブログ小説として先行公開。映画製作秘話や独占ニュース、関連情報など、映画をより深く楽しむためのコンテンツも小説の展開にあわせて掲載します。
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