ブログ小説『ハンティング・パーティ』

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zoom RSS 【小説】 第43話 荒らされていた部屋

<<   作成日時 : 2008/04/08 13:14   >>

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広いロビーを横切る間、3人は無言で急ぎ足になった。

ベンは「誰も信用するな」というサイモンの言葉を思い出し、誰の顔もあえて見ないようにしっかりダックの後頭部を見つめて歩いた。

エレベーターに乗り込んでも、盗聴器があるような気がした。
人間は疑い始めると自分を取り囲むものすべてが恐怖に変わる。

チン、と音がして彼らが泊まっている階で扉が開く。

その瞬間すら、サイモンは鋭い目つきで左右を見てから、降りた。
二人がそれに続いた。

しかしダックはサイモンほどに危機を感じてはいなかった。
そこまでうるさく言うサイモンの魂胆が別にあることを思い出したからだ。

サイモンは金がない。
おそらく宿無し状態だ。

「おまえ、俺の部屋で寝るのか」

イエスともソーリーとも言わず、サイモンは当たり前のようについてくる。

「ごゆっくり」

ベンは自分の部屋の鍵を開けた。

部屋に入る前にダックはサイモンに言った。

「サイモン。
俺だってこの話が本当ならいいと思ってる。
だが確証は何もないんだ。
ボリスもマルヤナも信用できない。
尾行してきたのも、たぶんその辺の酔っ払いに決まってるさ」

サイモンは勝手にダックから鍵を奪って部屋を開けた。

「じゃ、この状態をどう説明する?」

部屋は荒らされていた。
椅子が倒れ、ベッドカバーははがされ、トランクの荷物がぶちまけられていた。

「… 」

ダックは恐怖に目を見開いたままサイモンを見た。

「消えよう」

サイモンが入り口のほうへ首を振った。

その時、羽交い絞めにされ、拳銃を突きつけられたベンの姿が現れた。

サイモンが振り向くと、部屋に入っていったダックも同じ格好で出てきた。

覆面をしたもう一人の男がダックの部屋から現れて、サイモンのこめかみに拳銃を突きつけた。

「動くな」
「わかった」

サイモンに銃を突きつけていた男が低い声で言った。

「フォックスに会いたいか。
ちょうどいい。
彼もおまえらを捜していたんだ」 

三人は手を挙げ、それぞれが頭のどこかに銃口の冷たさを感じていた。
前のめりの姿勢のまま、ホテルの非常階段を下ろされていった。

死は今度こそリアルに襲いかかっていた。



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※映画『ハンティング・パーティ』は、5月10日(土)よりシャンテシネ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショーです。



※ブログ小説目次
第1話 サイモンとダック
第2話 ぶち切れたサイモン・ハント
第3話 ボスニア・ヘルツェゴビナへようこそ
第4話 ベン、ホリデー・インのバーにデビューする
第5話 落ちぶれた相棒
第6話 3人は揃った
第7話 「聞こう。ネタって?」
第8話 ムスリムのカフェで
第9話 盗み聞き
第10話 “生と共に死を授かった男”
第11話 出発
第12話 チェレビチの森で
第13話 セルビアの村はずれのカフェ
第14話 撃たれた3人の車
第15話 フォチャへ
第16話 警察のティータイム
第17話 チェレビチからの命令
第18話 国連の男・ボリスとの出会い
第19話 プロの出番
第20話 フォックスは守られていた
第21話 バーの外の暗闇で
第22話 危険へと続く道
第23話 マルダとウーナ
第24話 サイモンの恋
第25話 サイモンの恋A
第26話 最悪の別れ
第27話 チェレビチの見張り人
第28話 バーを探す
第29話 招かれざる客
第30話 命がけの問い
第31話 オレンジの車を追え
第32話 「ひざまずけ!」
第33話 クロアチアの小人
第34話 また現れた男
第35話 約束
第36話 天国から地獄へ
第37話 嘘
第38話 夜9時。ビシェグラード
第39話 マルヤナという女
第40話 CIAのルール
第41話 追っ手の影
第42話 誰も信用するな

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