ブログ小説『ハンティング・パーティ』

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zoom RSS 【小説】 第22話 危険へと続く道

<<   作成日時 : 2008/03/26 13:44   >>

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チェレビチの森へと続く道は、朝もやにけむっていた。

ひなびた村のホテルの前に黄色いベンツが止まっている。

まずダックが現れた。


一晩眠って、目覚めた朝には心は決まっていた。

いや、昨夜サイモンと口論している間も心は決まっていたのだ。

疲れ果て、神経をすり減らし、あきれはてても「真実」を追う面白さにはかなわないのだ。

それはギリシャで待つ女の… 小麦色のはちきれそうなボディに顔を埋めるよりも。

もちろんそれも大事だが、後回しでもいいような気がしてしまうのだった。


ヘンタイか、俺?… ダックがため息をついたとき、ベンが現れた。

「正気じゃないっすよ」


そう言いながらも、車に自分の荷物を放り込んだ。

「インタビューもヤバいのに、傭兵気取りですかねえ、あの人は」


なんとなくサイモンがまだ居そうなホテルの窓の辺りを見上げる。

ベンはダックの隣に、意気がって車窓に肘をついて立った。

「ああ。バカンスに行ってればなあ… 」


ダックはわざと悲しげに言ってみたが、それでも出発しようとしているベンの姿に、うれしさがこみ上げてきた。


なんとなく弟分を見る眼差しになったダックに向かって、ベンはサイモンを責めた。

「ほんとにもう。あんなふうだから生放送でキレるわけですよねえ」


ダックの表情が歪んだ。

「あいつはイカれた男だが、あの日キレたのには、わけがあるんだ。
 ちょうど本番前にひどい体験を… 」
「それが特派員ってもんじゃないんですか。仕事の一部でしょ」


ダックはまじまじとベンを見た。

襲撃の後の、惨憺たる光景。

バラバラになった人間のかけら。

内臓を噴出した死体。

頭の半分が吹っ飛んだ状態で固まっている男。…

そんなものを目の当たりにしたことがないベンに、言われたくはなかった。

しかも、心から愛する人を失った経験は、ベンにはきっとないだろう。

「まあな」


自分に言い聞かせるように答えて、それでもダックは数秒、ベンに本当のことを話すべきか戸惑った。


勉強だけすればよかった幸福なおぼっちゃまにきちんと伝わるかどうかという怖さもあった。


ベンはそんなダックに、まだ止めを刺すように言った。

「あの日のサイモンのテープを見ましたよ。
なんですか、あれ。
酔ってて、ハイになってぶちキレたんでしょ。
今もおんなじじゃないですか」


ダックは心を決めた。


本当のことをベンには話す必要がある、と。


※映画『ハンティング・パーティ』は、5月10日(土)よりシャンテシネ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショーです。



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※ブログ小説目次
第1話 サイモンとダック
第2話 ぶち切れたサイモン・ハント
第3話 ボスニア・ヘルツェゴビナへようこそ
第4話 ベン、ホリデー・インのバーにデビューする
第5話 落ちぶれた相棒
第6話 3人は揃った
第7話 「聞こう。ネタって?」
第8話 ムスリムのカフェで
第9話 盗み聞き
第10話 “生と共に死を授かった男”
第11話 出発
第12話 チェレビチの森で
第13話 セルビアの村はずれのカフェ
第14話 撃たれた3人の車
第15話 フォチャへ
第16話 警察のティータイム
第17話 チェレビチからの命令
第18話 国連の男・ボリスとの出会い
第19話 プロの出番
第20話 フォックスは守られていた
第21話 バーの外の暗闇で
第23話 マルダとウーナ
第24話 サイモンの恋
第25話 サイモンの恋A
第26話 最悪の別れ

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5月10日(土)公開のリチャード・ギア主演映画『ハンティング・パーティ』をブログ小説として先行公開。映画製作秘話や独占ニュース、関連情報など、映画をより深く楽しむためのコンテンツも小説の展開にあわせて掲載します。
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