ブログ小説『ハンティング・パーティ』

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zoom RSS 【小説】 第14話 撃たれた3人の車

<<   作成日時 : 2008/03/22 07:08   >>

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カフェを出て黄色いベンツに乗り込みながらも、3人はさっきのセルビア人ウエイターの話にショックを受けていた。

ダックはベンに話しかける。

「セルビア人の誇りをもったウエイターは怖い。
これでサイモンの話が本当に思えてきた」
「なぜ」

ベンは首をかしげる。

「“チェレビチ”にいないと言っていたじゃないか」
「ってことは、いるのかも」
「本当にいないのかも」

ベンはしぶとい。
しかしダックにも確信があるわけではない。

「その可能性もある」

サイモンが運転席に乗り、車は走り出した。

そのとたんパーン、パーンと銃声が響いた。

「伏せろ」

サイモンがアクセルを踏む。

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「行くぞ!」

発砲は続いた。

一発はサイドミラーに見事に命中した。

車は猛スピードで蛇行し、なんとか射程距離を離れた。

殺されかけた3人はほっと一安心した。
ダックもベンも興奮状態だ。

「なぜ撃ってきた?」
「やばい。殺される。来た目的がばれたんだ」

ウエイターはフォックスの手下だったのか。
それともそんな普通のカフェのウエイターまでが、彼に洗脳され、命がけで彼を守り続けているのだろうか。

ハンドルを握るサイモンだけがやけに冷静だ。

「パニくるな。今のはフォックスとは関係ない」

ベンは頭が真っ白になりながら、情けない声を出す。

「客を撃つのがここの風習かよ」

その時、サイモンがポケットからギュウと丸められた20ドル札を取り出し、二人に見せた。

ダックは呆れかえった。

「俺が払った金か」
「テーブルに置いた金?」

ベンが、信じられないと白目をむく。

サイモンは真顔で言った。

「俺は一文無しでね」
「だから払った金をかっぱらったっていうんですか」
「あんな野郎より俺にとって必要だからな」
「たった20ドルのために…ですかっ」
「撃つとはねえ」

サイモンはベンの言葉を茶化した。

「信じられない!」

ダックは恐怖の緊張もぷつんと途切れて、へらへらと笑いがこみあげてきた。

「番組で大統領の新税法を取り上げたときも銃撃戦があったもんなあ… 」

他人事のように言いながら、サイモンはバックミラーの中の顔を覗き込む。

「ダック、どうだ。昔の取材のスリルが蘇っただろ」

バックミラーの中の顔がすっかり笑っている。

「あたり、だな」

力の抜けてしまったベンは、不思議な恍惚感を覚えながら窓の外を眺めていた。

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初めて味わうスリル。それは机の前で新しい本を読むのとはまったく違う快感。

そう、ベンは「スリルは気持ちがいい」ことを知ったのだった。


※映画『ハンティング・パーティ』は、5月10日(土)よりシャンテシネ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショーです。



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※ブログ小説目次
第1話 サイモンとダック
第2話 ぶち切れたサイモン・ハント
第3話 ボスニア・ヘルツェゴビナへようこそ
第4話 ベン、ホリデー・インのバーにデビューする
第5話 落ちぶれた相棒
第6話 3人は揃った
第7話 「聞こう。ネタって?」
第8話 ムスリムのカフェで
第9話 盗み聞き
第10話 “生と共に死を授かった男”
第11話 出発
第12話 チェレビチの森で
第13話 セルビアの村はずれのカフェ
第15話 フォチャへ
第16話 警察のティータイム
第17話 チェレビチからの命令
第18話 国連の男・ボリスとの出会い
第19話 プロの出番
第20話 フォックスは守られていた
第21話 バーの外の暗闇で
第22話 危険へと続く道
第23話 マルダとウーナ
第24話 サイモンの恋
第25話 サイモンの恋A
第26話 最悪の別れ

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5月10日(土)公開のリチャード・ギア主演映画『ハンティング・パーティ』をブログ小説として先行公開。映画製作秘話や独占ニュース、関連情報など、映画をより深く楽しむためのコンテンツも小説の展開にあわせて掲載します。
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