ブログ小説『ハンティング・パーティ』

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zoom RSS 【小説】 第10話 “生と共に死を授かった男”

<<   作成日時 : 2008/03/20 08:26   >>

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翌朝、サイモンがやって来る前に、ダックはベンを呼び出した。

ホテルの外へ出た。

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壁を黄色く塗りつぶしたホリデー・インというホテルは、太陽の下では異彩を放つ。

二人は「ウエルカム・トゥ・サラエボ」と描かれた壁の前にやって来た。

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ベンは真面目な顔でダックの話に聞き入った。

「フォックスの警護軍団のリーダーはサージャンというサイコ野郎だ。
イスラム教徒の娘たちをレイプしまくって切り刻み、村々を“浄化”していったんだ… 」

ベンは本で読んだ「民族浄化」という言葉の意味を初めて目の当たりにした。
それはレイプと殺戮の繰り返し。
いったいそんなことで何が浄化されたというんだろう。

「ひどい」
「その先がある」

ダックはバーでこの国から離れないジャーナリストたちから聞いた情報を、余すことなくベンに伝えたかった。

「フォックスの警護を務めるこのサージャンって野郎だが…額にキリル語のタトゥーがある… 」

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目を白黒させるベンは、思わずダックの額を見つめ、目線を合わせる。

「なんと刻んでるんですか」
「“生と共に死を授かった男”」

ベンはごくりと生唾をのんだ。

「ハーバードで習ったか?」 
「… 」
「目指すは狂気の渦巻くバルカンの暗黒地帯。
 自治地区のセルビア人共和国。
 もちろん、善良な住民も大勢いる。
 だが他民族を殺して姿を消した人間と呼べないサイコもいる。
 フォックスに危害を加える者は蚊のように叩き潰される」
「なぜそこまで彼を信望するんですか」
「フォックスはやつらの神なんだ。だから、命を捨ててでも守るんだよ」

ベンは今まで味わったことのない、胸の奥の震えを感じていた。

大変なところに来てしまったという後悔と、大変な場所に来ることができたというジャーナリストとしての初めての興奮に。

ダックの情報はこの仕事が「命がけ」であることをひたひたと物語っていた。

「それでも行くなら。出発は20分後だ」。


※映画『ハンティング・パーティ』は、5月10日(土)よりシャンテシネ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショーです。



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※ブログ小説目次
第1話 サイモンとダック
第2話 ぶち切れたサイモン・ハント
第3話 ボスニア・ヘルツェゴビナへようこそ
第4話 ベン、ホリデー・インのバーにデビューする
第5話 落ちぶれた相棒
第6話 3人は揃った
第7話 「聞こう。ネタって?」
第8話 ムスリムのカフェで
第9話 盗み聞き
第11話 出発
第12話 チェレビチの森で
第13話 セルビアの村はずれのカフェ
第14話 撃たれた3人の車
第15話 フォチャへ
第16話 警察のティータイム
第17話 チェレビチからの命令
第18話 国連の男・ボリスとの出会い
第19話 プロの出番
第20話 フォックスは守られていた
第21話 バーの外の暗闇で
第22話 危険へと続く道
第23話 マルダとウーナ
第24話 サイモンの恋
第25話 サイモンの恋A
第26話 最悪の別れ

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
額にタトゥーは嫌ですねー。
せたP
URL
2008/03/20 16:38
このひと、映像で見るとめちゃくちゃ怖いです。

けっこう現地でオーディションしたらしいですが、

怖すぎます。。。
おとなあやや
URL
2008/03/20 19:56
おとなあややさん
現地オーディションなんですね。はまり役ですね。
せたP
2008/03/21 07:45
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