ブログ小説『ハンティング・パーティ』

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zoom RSS 【小説】 第5話 落ちぶれた相棒

<<   作成日時 : 2008/03/17 00:27   >>

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銀色の髪。広い肩幅。手には酒。

「やあ、ダック」

ベッドに無断で腰掛けていたその男は、ゆっくり顔をあげた。

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「サイモン!」

ダックはうれしい声をあげた。
鬼ごっこで子どもが鬼を見つけたように。

「驚いたか?」

再会を喜んで二人は思わず抱き合った。
ダックはその男がユウレイじゃないことを改めて確認した。

「生きてたのか… 驚いたな」

今度は顔をまじまじ見つめる。
さすがに年をとったようだ。
しかし無精ひげは生やしているものの、極端に痩せたわけでもない。
顔色はあまりよくはないが、なんとかやっていっているのだろう。
ただ、老けた。

「この通りだ。ちゃんと生きてたさ… 戦争は探せば必ずどこかでやってる」

彼はまだジャーナリストだということを示した。
ダックは哀れむような目で彼を見た。
きっと苦労しているに違いない。

「無事か?」
「ああ… なんとか」

サイモンはミニボトルをくいっと一杯ひっかけて、冷蔵庫を指差した。

「あそこのバーを勝手に荒らして、ウォッカを失敬したよ」

腹を立てる様子もなく、ダックは静かに尋ねた。

「それで?」
「君らの取材を見てた。フランクリンは若返ったな。整形でもしたか」
「目のまわりのシワを引っ張った」
「やっぱり」

小首を傾げるサイモンに、ダックは彼が姿を現した真意を問いただそうとしていた。

「取材を見てたって言ったよな」
「ああ、見てた」
「それで」
「明日の式典で俺のレポートを撮ってもらえないかな… 昔のよしみで」

ダックはお安い御用だと微笑んだ。

「ああ。いいよ」 
「カメラマンを雇う金を節約できるとありがたい。撮った映像はドイツかジャマイカに売れるからな」
「なるほど… 」

ダックの脳裏に「あの頃」が蘇った。
地獄の戦地で二人が出会ったそれぞれの女との思い出。

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窓から硝煙臭い風が吹き込むのに、どこからか女たちが探してきたアロハシャツとハイビスカスの造花の飾り。

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ハワイアンパーティーと称して、一時を楽しんだ、あの夜。
ダックはギターを弾いて歌った。
「なんて下手なの」と、女たちは笑い、サイモンの顔も崩れっぱなしだった。
… そしておぞましい出来事。
サイモンが生中継の後マイクを放り上げた瞬間。…

二人の間にはいつも友情があった。
黙って彼を見送り、ダックはニューヨークで一人おいしい思いをしている自分を突然自分で許せなくなった。
ダックは胸にこみあげるものを押しさげて、やっと言った。

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「サイモン。言っとくが俺は君を… 捜したんだ」
「いいんだ… わかってる」
「いろいろ噂が…」
「全部本当だ」

気まずい空気が流れた。
サイモンは、意を決したように言った。

「ネタをつかんだ」

その表情にダックは一瞬、往年のサイモンを見た。

「俺がまた第一線に返り咲けるすごいネタだ。どうだ、興味が湧いたろ?」

しかしダックの前にいるのは、どこにもネタを買ってもらえない、借金まみれのゴロツキに成り果てた、老いたサイモン・ハントだった。

「君のためならどんな話にでも乗りたいんだが、明後日ギリシャで女と落ち合う約束をしてて。
…すっぽかせないんだ。
やっと3週間の休暇を取ってね。
タイミングがまずい」

サイモンの顔色が失意に変わった。
肩を落とすサイモンにダックはせめてもの友情を言葉にした。

「明日はカメラを回すよ。ストック映像も撮ろう」
「わかった。じゃあ」

ダックが言い終わらないうちに、サイモンは立ち上がり、ドアの前で後ろ姿になっていた。

「待てよ、サイモン!」
「元気でな」
「サイモン!」

ダックはその落ちぶれた背中を見送るしかなかった。


※映画『ハンティング・パーティ』は、5月10日(土)よりシャンテシネ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショーです。



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※ブログ小説目次
第1話 サイモンとダック
第2話 ぶち切れたサイモン・ハント
第3話 ボスニア・ヘルツェゴビナへようこそ
第4話 ベン、ホリデー・インのバーにデビューする
第6話 3人は揃った
第7話 「聞こう。ネタって?」
第8話 ムスリムのカフェで
第9話 盗み聞き
第10話 “生と共に死を授かった男”
第11話 出発
第12話 チェレビチの森で
第13話 セルビアの村はずれのカフェ
第14話 撃たれた3人の車
第15話 フォチャへ
第16話 警察のティータイム
第17話 チェレビチからの命令
第18話 国連の男・ボリスとの出会い
第19話 プロの出番
第20話 フォックスは守られていた
第21話 バーの外の暗闇で
第22話 危険へと続く道
第23話 マルダとウーナ
第24話 サイモンの恋
第25話 サイモンの恋A
第26話 最悪の別れ

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☆スクープ情報局☆ 号外:
『ハンティング・パーティ』主演のリチャード・ギア、熱いね。 ...続きを見る
ブログ小説『ハンティング・パーティ』
2008/03/20 08:54

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
なぜかこの話にコメントついていませんが、こういう哀愁漂うシーンが僕は好きです。
せたP
URL
2008/03/19 21:44
ジャーナリストって死ととなり合わせ
で生きてるとこがすごいですよね。
わたしは戦場に行ったら、たぶん真っ先に
弾にあたるタイプだと思います。
koibana
2008/03/22 12:13
ウェブリブログ

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5月10日(土)公開のリチャード・ギア主演映画『ハンティング・パーティ』をブログ小説として先行公開。映画製作秘話や独占ニュース、関連情報など、映画をより深く楽しむためのコンテンツも小説の展開にあわせて掲載します。
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